【コラム】積み重ねる日々の、その先に

※今回は、働く中でふと立ち止まって考えた“家族”にまつわるお話です。


この春、息子が中学校に入学しました。

私は現在、単身赴任中のため、残念ながら入学式に立ち会うことはできませんでした。息子の晴れ姿をこの目で見ることは叶いませんでしたが、式のあと、妻が写真を送ってくれました。紺色のブレザーに袖を通し、少し照れくさそうな、それでいてどこか自信をにじませた表情の息子。その姿をスマートフォンの画面越しに眺めながら、胸の奥にふわりと温かいものが広がるのを感じました。

ほんの数年前までは、靴ひもを結ぶのにも手間取っていたのに、いまやネクタイを自分で締めて、背筋を伸ばして立つようになった。あのときの小さな背中は、いつの間にか、たくましくも頼もしいものに変わってきています。子どもの成長とは本当に早いもので、こちらが気づかないうちに、知らない世界へと歩みを進めているのだなと、あらためて実感させられました。

最近は会える機会も限られており、電話をかけても会話は短く、返ってくる言葉は「うん」とか「別に」とか。思春期というのは、子どもが自分の世界を持ち始める大切な時期なのでしょうが、親としては少し寂しさを感じることもあります。ですが、それもまた成長の一段階なのだと受け止め、今は少し距離をとりながら、静かに見守る時期なのかもしれません。

正直なところ、単身赴任で家を空けるようになってから、父親としての役割をきちんと果たせてきたのか、不安に思うこともあります。近くで支えられるはずの時期に、そばにいられなかったことを申し訳なく感じることもあります。それでも、たまに届く写真や話題のなかに、確かに息子が歩み続けている姿を感じるとき、少しだけ救われるような気がします。

入学式の写真に写る息子は、たしかに一歩を踏み出した表情をしていました。親として、何よりうれしかったのは、その姿にしっかりとした意志が感じられたことです。新しい制服、新しい友達、新しい教室。これからの時間が、彼にたくさんの経験と出会いをもたらしてくれることを願ってやみません。

離れて暮らしている今、ふとした瞬間に子どもの成長を感じるたび、仕事への向き合い方にも変化があるように思います。親としての責任と誇りは、そのまま社会人としての姿勢にも通じているような気がします。

家族のために、そしてお客様のために。
目の前の仕事を丁寧に、真摯に、積み重ねていくことで、遠く離れた家族にも胸を張れる自分でありたい——そんな思いを新たにする春の日となりました。

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